Fumio Eguchi Laboratory Blog

高崎健康福祉大学健康栄養学科江口文陽研究室のブログです。基本的に記事は公開ですが、一部の記事については、パスワードをご存知の方のみの閲覧とさせていただきます。

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「福島原発事故による放射能汚染とその対策」

「福島原発事故による放射能汚染とその対策」
~きのこを中心とした風評被害防止の観点から~

高崎健康福祉大学 健康福祉学部 健康栄養学科 
教授 江口文陽
【はじめに】
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所の事故により、福島原発から近い自治体で生産されているシイタケ(原木露地栽培)、ホウレン草、かき菜、パセリ、イネ、原乳などから国で定めた暫定規制値(イモや根菜を除く野菜:放射性ヨウ素=2000Bq/㎏、放射性セシウム=500 Bq/㎏)を超えた放射線量が検出されたため、それらの品目の出荷が自粛された。また、これらの健康危害に関与する報道での風評被害により、当該地域の野菜価格が低迷したり、取引のキャンセルなどが発生した。日本政府は、出荷自粛となった農作物の生産者ばかりでなく、風評被害を被った生産者も救済対象にするとの考えを表明した。しかしながら、現段階では暫定規制値を超えた作物の出荷自粛など安全確保が議論されるだけであり、福島原発からの放射性物質拡散予測に基づいたきのこの汚染や安全性に関する評価などの研究は立ち遅れている。
本研究では、福島原発事故発生直後からシイタケを初めとする栽培きのこおよび野生きのこの放射性物質による汚染の現況を調査した。また、汚染されたきのこの放射性物質の半減期、汚染された木粉でヒラタケやシイタケを栽培した際の子実体の放射線量などを詳細に解析した。また、まもなく春に種菌を接種する原木栽培に向けた原木の伐採などが実施されるが原木の汚染状況が明確でないため現場には大きな不安が渦巻いている。
本研究の主目的は、消費者への正しい情報発信と風評被害を防止することとともに、どのように注意を払ったら放射線の汚染のないきのこを生産できるのか、原木栽培および菌床栽培において生産者が少なくともとるべき行動について1500検体の検査結果をもとに情報を発信することである。
【実験】
①供試検体:演者が現地立ち入り調査時に採取したものや生産者および各地域のボランティアによって採取提供されたきのこ(栽培および野生)、水、生産資材(原木、木粉、栄養剤)、土壌を検体とした。また、放射線量が比較的高く検出された木粉を含む資材によってヒラタケとシイタケを栽培し、そこから発生した子実体の放射線量を測定した(移行率の確認)。
②放射性物質の測定:検体は、LB200 アクティビティモニターおよび LB2045 アクティビティスペクトルメーター(ともにベルトールドジャパン株式会社)の測定容器内に均一に投入できるよう微塵切にしてマニュアルに従って測定した。
③安全なきのこを栽培するための生産手法の提言:福島を中心としたきのこ生産者が抱える問題や消費者の安心を考えたきのこの生産方法の一案を提言するための解析を実施した。
【結果と考察】
福島第一原子力発電所の事故直後から収集した1500検体のきのこおよび資材の放射性物質による汚染状況を調査した。
①露地栽培(原木に種菌を接種した時から子実体発生までの全期間を露地で実施)、②原発の事故後も露地で培養し子実体発生時のみ施設内管理した原木シイタケ、③野生きのこから暫定規制値を上回る検体が多く観察された。最も高濃度汚染されていた野生のきのこは、福島県内より採取された野生のセンボンクヌギタケ(4289 Bq/㎏)、次いでヒメコガサ(4184 Bq/㎏)であった。人工栽培されている原木露地栽培のシイタケで暫定規制値を超えて高濃度の放射性物質が測定されたものは、2011年4月11日に福島県内より提供されたもであり、放射性ヨウ素が3346 Bq/㎏、放射性セシウムが946 Bq/㎏であった。露地栽培の原木シイタケで暫定規制値を超えた検体の採取場所は放射性物質拡散が予測されている地域とほぼ一致した。ただし、本実験で入手したきのこで放射線量が暫定基準値をはるかに超えたものは、放射性物質に暴露されやすい野生種と露地栽培のシイタケおよび菌床栽培の木粉を野外に放置させ菌床を作製した菌床栽培のきのこのみであり、栽培全行程において屋内(ビニールハウス等)で栽培された原木シイタケや培地原材料を屋内やシートで養生して栽培した菌床シイタケを初めとしたきのこは暫定規制値を大きく下回り、健康を害する汚染を受けていないことが明確となった。また、1589Bq/㎏の放射性物質が検出された木粉を栽培用資材として子実体を発生させたところ、ヒラタケでは放射性セシウムが暫定規制値を下回る469.2±23.5 Bq/㎏(移行率29.5%)、シイタケでは715.2±44.6 Bq/㎏(移行率45.0%)であった。さらに214 Bq/㎏の放射線が検出された木粉を使用して発生したヒラタケとシイタケはそれぞれ20.7%と37.6%の移行率であった。5種類の放射線汚染木粉を使用して沿い倍した平均移行率のヒラタケが27.72%、シイタケが38.44%であった。
また、露地栽培で野外においてあった榾木を植菌1年~5年と経時的に調査したところ、シイタケの菌糸成長に伴って朽ちた比率が高いほど樹皮のみならず樹幹まで水を介して放射性物質が侵入し高濃度に汚染されたシイタケが発生している結果であった。すなわち植菌2年の榾木の樹皮は1547 Bq/㎏、樹幹214 Bq/㎏、発生したシイタケ214 Bq/㎏であったのに対し、稙菌4年の榾木の樹皮は1411 Bq/㎏、樹幹1391 Bq/㎏、発生したシイタケは845 Bq/㎏と暫定規制値を大きく超えた。
さらに、シイタケの原木となる立木を伐採して放射線汚染状況を検査したところ16試験地の原木の樹皮は高濃度(最高3698 Bq/㎏)に汚染されていたものもあったが、樹幹は最高値で289 Bq/㎏(16試験地の樹幹平均は56 Bq/㎏)であった。また、樹皮の放射性物質は高圧水流で洗浄すると最大で68.7%(平均52.8%)除染できた。
【本研究から解明された放射線に汚染されないきのこ栽培のポイントとは】
①原木栽培のポイントは、空間線量の高い地域では、現在栽培されている3年以上の榾木から発生するシイタケは高濃度汚染の可能性が高いことが予想されるため汚染を確認するとともに露地に展開している場合は使用を控えるべきである。
②原木栽培でのシイタケ栽培は、空間線量が高い地域での露地栽培は避け、常に雨水や放射性物質を含む霧がかからないような施設内で行うことが肝腎であり、浸水刺激に利用する水を深井戸や水道水などの汚染水ではないものを使用することである。
③来年の春の植菌に向けた原木への伐採は、その地の空間線量の調査とともに樹皮の部分的採取による汚染状況確認が必要である。仮に、暫定規制値以下の樹皮汚染であれば、樹幹内への高濃度汚染はないものと考えられるため、水洗浄等の除染を実施すれば原木の利用も移行率などの試験結果と併せて可能ではないかと考察している。
④菌床の資材となる木粉製造においては、手間がかかるが樹皮の剥離を施した樹幹を粉砕して利用すれば多くの場合問題は生じないものと推察する。また、木粉を製造現場に静置する際には屋根つきの場所や木粉に雨水や霧が直接かからないような養生が不可欠であり、原木の浸水や加湿と同様に水の環境管理にも最大限の注意を払う必要がある。
⑤野生きのこは常に露地で雨水などを介して直接的な放射性物質の影響を受けやすいものである。現地調査の結果、水が流れた際の道となる窪地や斜面傾斜の下部および水はけの悪い湿った場所、さらには落葉や腐葉土の上層から発生しているきのこの放射線汚染度は高い傾向であった。しかしながら、その現象は傾向であり、野生種の場合上記の条件とまったく異なる環境の場所から発生していたきのこであっても高濃度に汚染されているものもある。また、野生種は屋内栽培環境の条件と異なるため安易に放射性物質が高いと決めることができないことも事実である。さらに、演者に寄せられる問い合わせの中には、野生きのこを採取して接触したが健康に影響はないかとの内容が多いが、野生きのこの場合その条件下で発生していたきのこが栽培種のように多量にあることは少ない。したがって、摂食による量を考慮しても医学的検査における放射線照射量よりもはるかに低いことはお判りのとおりであり、過度な心配はないと考える。しかしながら、健康危害の防止の観点から科学的判断のもとに野生きのこの摂食をしていただきたいと考えている。また、野生種における放射線汚染の特徴としては木材腐朽菌よりも菌根菌などの仲間に分類されるきのこに汚染の度合が高く観察された。
⑥生産者におかれては、今後の原発における放射能の飛散に関する大きな変化がなければ、原木栽培、菌床栽培ともに屋内栽培環境と使用原材料の管理体制を強化することで暫定基準値を超えることなく加速的に汚染のないきのこの生産が可能になるものと考える。
⑦消費者におかれては、市場に流通されているきのこをはじめとする食品は、暫定基準値以下の物であることが私の調査(市販品168検体)から確認されている。また、政府や行政機関は、今後機器の整備を図るとともに多くの品目での検査が実施されるはずであり、安全性が確保されていくものと考える。
⑧演者は、きのこおよび食品素材の専門家として今後も継続的に調査を実施して消費者に正しい情報を発信していきたいと考えている。

なお、本研究は日本きのこ学会会長山中勝次先生、富山県農林水産総合技術センター高畠幸司先生、マッシュ・テック株式会社吉本博明先生、株式会社富士種菌相場幸敏先生、郡山女子大学広井勝先生、高崎健康福祉大学宮澤紀子先生の協力により実施されているものです。
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